成果事例紹介

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新技術 木造屋根の耐久性・施工性向上のための防水・通気工法の開発

1.技術開発等のあらまし

(1)概要

本開発は、住宅建築の屋根断熱仕様における通気層工法で、防水と通気を兼ね備えた防水通気シートを開発し、屋根断熱仕様で主に採用されている面材下通気層工法(以下、既存工法という)と同じ安全な性能を有し、施工においては簡易で効率的な施工を可能とする工法を整備した。
具体的には、

  • 開発した防水通気シートは、必要とする各性能(=防水性、通気性、耐圧性など)を、防水試験、通気試験、耐圧試験、防露シュミレーション、及び環境試験室や小型試験棟、実代試験棟での環境試験などの性能検証から、各性能における安全性の確認を行い、仕様を決定した。
  • 屋根断熱仕様の施工の効率性=生産性を、実代試験棟等で施工の比較試験を実施し、比較から既存工法より、防水通気シートを使用した工法で 57.9%の削減、仕様全体の施工工数では22.9%の削減=生産性の向上を確認した。
  • 性能と施工性の確認から、実用化に必要とする施工マニュアルの基本を整備した。

(2)実施期間

令和元年度 ~ 令和2年度

(3)技術開発等に係った経費

技術開発等に係った経費(実施期間の合計額) 17,424千円
補助金の額(実施期間の合計額) 8,558千円

(4)技術開発等の構成員

  • 坂本 雄三 (一社)き塾 理事(東京大学 名誉教授)
  • 永井 大嗣 (株)ナガイ 代表取締役社長
  • 大嶋 洋一 (株)藤島建設 取締役専務

(5)取得した特許及び発表した論文等

特許申請の準備中(2021年度に申請予定)

2.評価結果の概要

(1)本技術開発等のアウトプット、アウトカム

アウトプット
  • 屋根断熱仕様の通気層工法用に、防水と通気性能を併せ持つ、防水通気シートを開発
  • 防水通気シートを使用した、簡易施工を可能とする工法と仕様構成を整備した。

アウトカム

防水通気シートの各性能試験の検証から

  • 既存工法と同じ安全性能(防水、通気)を確認

施工試験における各項目での検証と比較から

  • 各通気層工法のみの工数の比較で、57.9%の削減を確認
  • 屋根断熱仕様の各工法の全体構成のリードタイムで、14.3%削減=生産性の向上を確認
  • 屋根断熱仕様の各工法の全体構成の工種で、22.2%削減=生産性の向上を確認
  • 屋根断熱仕様の各工法の全体構成の工数で、22.9%削減=生産性の向上を確認
  • 生産性の向上から、標準的な屋根での施工で、1.5 日の施工日数の削減を確認

(2)技術開発等の必要性

現状の屋根断熱仕様の通気層工法は、標準的な仕様や推奨する工法が少なく、且つ様々な屋根形状への対応が確立していないため多くの課題を抱え、施工の合理化=生産性の向上が必要となっている。その課題の解決ため、防水と通気の両方の機能を持つシートを開発し、工数が少なく簡易に施工できる工法と仕様の整備を行い、屋根断熱仕様の通気層工法の施工における施工者の負担を軽減し、工法の普及による屋根の耐久性の向上を行う。

(3)技術開発等の効率性

防水通気シートによる通気層工法の開発で、き塾理事の坂本雄三は、温熱環境の研究での多くの実績から防水通気シートの開発と性能の検証を担い、株式会社ナガイは、独自の透湿ルーフィング開発の知見に基づき防水通気シートの加工と製造を担当し、藤島建設は、木造住宅は長年の住宅建築における施工実績から防水通気シートの施工性の検証を担う など、各構成員の果たした役割と外部協力機関等との連携から、効率的な開発を実施した。

(4)技術開発等の完成度、目標達成度

  • 全体の完成度、目標達成度 応募時の目標に対して 達成度95%
  • 技術開発項目毎の完成度、目標達成度
    1)通気シートの開発      達成度95%
    2)施工性の検証と施工の整備  達成度95%

屋根断熱仕様の通気層工法用に防水と通気の両方の性能を兼ねる防水通気シートを開発した。
防水通気シートの開発から、防水通気シートによる施工性を既存工法と比較した。比較は施工における工数等で行い、比較から既存工法より生産性の向上が大幅に図れること確認した。施工性の確認から、工法としての整備のために、工法に必要とする他の部位(軒先、棟等)の仕様を、性能の検証と合わせて決定し、施工マニュアルの基本を整備した。

(5)市場化の状況

2021年度での市場化に向けて以下の各項目を整備している。

  • 製品と工法
    • 試験データの整備と公的認証等の取得
  • 製造関係
    • 量産化に向けた製造体制の整備
    • 製造の効率化による製造費用の削減の検討と実施
  • 販売のための整備
    • 住宅工務店や建材店へカタログ配布などによる製品と工法を紹介
    • 既存の施工店などに工法と施工内容の紹介(=講習会等の実施)
    • HP などによるメディアへの情報の公開と展示会への出店

(6)技術開発等に関する結果

成功点

住宅建築において、性能の高度化と施工の簡略化が喫緊の課題になってる。本開発は、部材の多機能化による性能の高度化と、施工の簡略化から、屋根通気用に防水層と通気層を一体化した多機能シートを開発し、施工工数等の削減と構成部材の簡略化を行うことで、性能の高度化と施工の合理化を可能とする部材と工法を開発した。

残された課題

施工マニュアルの基本を整備したので、これの内容を充実させ、完成させる。また、コロナ禍による素材の高騰や、施工時間の制限などから、製造コストの削減と施工の更なる簡略化を検討する。検討は、製品の簡略化と軽量化を目指し、さらに工法としての性能の安定的な維持のための部材構成(多機能建材や高性能部材等の探索、研究)の検討も行う。

3.対応方針

(1)今後の見通し

2021 年度まで実用化、市場化に必要とする各内容を整備する。

  • 施工マニュアルの内容を充実させ、完成する。
  • 2021 年度までに、工法としての公的認証等の取得
  • 住宅工務店や販売店への製品と工法の紹介を継続
  • 既存施工店への工法と施工内容の紹介(=講習会等の実施継続)
  • 2021 年度までに、販売と施工の実施対応する技術サポートセンターなどを設置





評価総括

成功点

屋根断熱仕様の通気層工法において、施工工数等の削減と構成部材の簡略化を行うことで、性能の高度化と施工の合理化を可能とする屋根通気用の防水層と通気層を一体化した多機能シートを開発した。

残された課題

要素技術としては完成しているが、コロナ禍による素材の高騰や、施工時間の制限等から、製造コストの削減と施工のさらなる簡略化を図る等、新たな技術を市場に受け入れてもらいやすい改善等が課題となる。

今後の展開への助言等

本事業の主旨に照らすと、早期の実用化が重要であり、部品製造・供給等の体制整備や公的認証の取得、並びにマニュアル類の整備・公開等を進めることが求められる。新たな部品・工法の普及にあたっては、各地での施工デモンストレーション等、工務店等に受け入れてもらうための方策も有効である。