成果事例紹介

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構造 高減衰ハイブリッドスチール建築システムの開発と生産システムの合理化

1.技術開発等のあらまし

(1)概要

本事業では柱・梁部材を鉄骨造、耐震要素を薄板軽量形鋼造とするハイブリッドかつ高減衰型の建築システムを開発した。具体的には本建築システムを構成する主要構造要素の構造・耐火性能を解析・実験及びモデル建物の建設等の実務検証を経て明らかにした上で、設計・生産システムの構築と、実施設計プロセスにおいて必要となる認定及び評定を取得し、実用に供するための準備が整った。

(2)実施期間

令和元年度~令和3年度

(3)技術開発等に係った経費

技術開発等に係った経費(実施期間の合計額) 153,000 千円
補助金の額(実施期間の合計額) 49,829 千円

(4)技術開発等の構成員

  • 山口誠 株式会社 ATC 商品開発部・部長 ※応募時:株式会社 MDI 建築本部商品開発部次長
  • 脇田健裕 アルキテック株式会社 代表取締役
  • 曽田五月也 早稲田大学名誉教授

(5)取得した特許及び発表した論文等

取得した特許

実用新案登録第 3228633 号(U3228633) 【考案の名称】ハイブリッドスチール建築物

発表した論文

無し

2.評価結果の概要

(1)本技術開発等のアウトプット、アウトカム

アウトプット
  • スチール部材を活用したハイブリッドかつ高減衰型の建築システムの開発。
  • 大臣認定及び構造評定の取得。
  • 一般的な一貫構造計算プログラムで運用可能な構造設計法の構築。
  • 未熟な技能者でも実施可能な設計・施工マニュアルの作成。
  • 工場での自動化生産ライン構築のための各種設備配置・運用計画図。
アウトカム
  • 熟練技能者の不足、高齢化に伴う非熟練工による施工でも安定した品質を確保。
  • 工場生産比率を高めることで生産工程全体に係る工数と人工を減少。
  • 高減衰な建築構造システムにより地震時の安全性向上と資産価値を維持。

(2)技術開発等の必要性

2011 年以降鉄骨造の需要は増え続けているが、溶接工やとび工の不足は深刻化しており、今後の建設需要を支えるためには鉄骨造建築の生産性を向上し、かつ非熟練工でも安定した品質を確保しうる建築システムの開発が必要であった。

(3)技術開発等の効率性

事業主体の株式会社 ATC は従前より鉄骨造の設計、施工を数多く手掛けており、生産システム構築と実用に際しての設計・施工に関して効率的な実施体制を築くことができた。また、アルキテック株式会社及び曽田五月也は鉄骨造建築の構造システム開発に関する十分な知識と経験を有しており、各種実験の実施及び評定等の取得に際し効率的に実施することができた。

(4)技術開発等の完成度、目標達成度

  • 高減衰ハイブリッド型スチール建築システムの開発
    1)各種モデルプランを対象とした設計検討と仕様の決定        達成度95%
    2)各種要素の性能試験と実施設計への適用検討            達成度90%
    設計・生産システムの合理化検討
    3)生産システムの構築と実験建物の建設及びその性能検証       達成度 95%
    4)建築システムの構造評定・認定の取得と設計・施工マニュアルの整備 達成度 85%
    提案する構造システムの各部仕様を設計及び解析により検討した上で、各種試験によりその性能を検証した。また実用に供するために必要となる構造設計手法を構築し、その妥当性を評定受審により明らかとした。実施の際に必要となる防耐火認定についても取得を行った。現在、実施設計 1 棟目の設計が進んでいるところであり、市場化にあたっては生産性の大幅向上を達成するための自動化生産ラインを備えた工場生産ラインの構築も重要となる。生産ラインの計画概要は概ね完成しているので、今後具体的な検討をさらに進めていく予定である。

(5)市場化の状況

設計・制作・施工マニュアルを作成した。また、構造設計に当たっては一般的な一貫構造計算プログラムにて設計を行えるように設計手法を構築した。生産体制については、BIMを中心とする設計システムと、自動化生産ライン構築検討を行い、生産工場の建設計画が現在進行中である。
2022 年度からは株式会社 ATC の自社施工物件への適用と並行して、(社)日本 CFS 建築協会の協力を得て他社の建設会社への工法提供も進めていく予定である。

(6)技術開発等に関する結果

成功点

薄板耐力壁の省資源性と生産性の高さと、鉄骨造の設計自由度の両立を重要ポイントとして開発を行った。短期間で数多くの仕様決定を行うために、各種実験と並行して FEM 等の解析的検討を活用し効率的に開発を進めた。耐火認定についてもボードメーカーの協力も得て仕様検討を行い、失敗なく認定取得に至ることが出来た。

残された課題

構造評定を進める中で、一部仕様の不足や実験、検討結果の未実施により、設計上の制約やルールが煩雑になってしまった部分が残された。今後、実施設計からのフィードバックも含めて更なる改良検討を続けていきたい。

3.対応方針

(1)今後の見通し

現在、一般評定を経ての実施1棟目の設計が進行中である。実用化については応募時の目標を達成したと考えているが、更なる市場化については今後進めていくべき課題である。実施物件で抽出される課題を反映した開発を続けていくことで、市場のニーズに適応した工法の完成を目指す。






評価総括

成功点

薄板耐力壁の省資源性と生産性の高さと、設計自由度の高い鉄骨造との長所を両立させ、生産システムと実用に際しての設計・施工の実施体制を築くことができた。

残された課題

事業者も把握している通り、パネルの組合せ等に係る設計ルール改善の必要性が認められているため、今後追加される構造評定の結果等を基に、着実に設計・施工マニュアルに改善反映し、市場への工法展開が求められる。

今後の展開への助言等

  • 実物件を通じて技術的な課題を改善しつつ、市場のニーズ、対象建設会社、用途、規模のイメージを明確にして普及に努めて行くことが重要となる。
  • 非熟練工でも適切な施工可能な技術を目指していることから、他社への工法提供に当たっては、大臣認定の権利会社として設計・施工面での十分な技術者教育を行うことが求められる。